【コラム】「伝統芸能道具のミライを考える」って何だろう
「道具から日本の伝統芸能のミライを考えたい」というのが、芸能道具ミライ研究室(「道具研」)のスタートラインです。今回はまず、この出発点を整理しておきたいと思います。
伝統芸能と道具と製作者と
伝統芸能には、楽器や小道具、衣装、鬘(かつら)などの道具が不可欠です。私自身、伝統芸能や道具についての調査研究を重ねるほどに、両者は運命共同体だと強く感じるようになりました。そして伝統芸能と道具を繋いでいるのが製作者の技です。
それにもかかわらず、芸能の道具製作者の技の素晴らしさや製作環境の現状、特に後者は、あまり注目されてこなかったのではないでしょうか。
ミライのタネを見つけ出す
では道具研は何から始めるか。伝統芸能の道具製作の現状を知って、ミライに繋がる小さなタネを見逃さずに集め、発信していくことが大切だと考えています。中でも注目しているのは、経済を含めた道具製作環境と、ミライを切り拓くための新たな人的交流です。
道具研では、これらのミライのタネを見つけ出してきて、「的確な情報発信」と「新たなネットワーク構築のための機会創出」に取り組んでいきたいと思います。
ミライを拓(ひら)く後押しをしたい
伝統芸能の表現が様々なジャンルで独特の魅力を放つように、道具製作も、修練と工夫の積み重ねにより、研ぎ澄まされた各々の世界を持っています。深化した道具製作の技と、開花する芸能表現。特に、これまで焦点化されることの少なかった道具製作の立場に寄り添って考え、行動して、「伝統芸能のミライを道具から拓く」後押しをしたいと考えています。
前原恵美