インボイス制度について

 インボイス登録すべきかどうかについては、インボイス制度の解説youtubeその他のSNSで多様な意見が示されています。現在(2023年6月)、テレビCMでは、複数のソフトメーカーは、インボイス対応や電子帳簿保存法については、自社製品を導入すれば、たちどころに問題解決?と誤認させる広告をしています。

 昨年(2022年)12月の財務省による、追加的『支援措置』が公表されるまでは、消費税の課税事業者(となる予定の事業者を含む)は、できるだけ早く、インボイス登録を行うようにお客様には指導していました。

 しかし、『支援措置』が明らかになると、簡易課税の税率の軽減や、インボイス登録の提出時期の延長などが含まれており、インボイス制度について、必ずしも2023年3月末までに登録を行う必要が薄れ、『支援措置』の内容をよく読んでからでも十分間に合うのでは、と思っています。

 支援措置の概要(令和5年度改正におけるインボイス制度の改正について)は以下のとおりです。

−−−−−−−<財務省websiteより>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

インボイス制度、支援措置があるって本当?(財務省websiteの表現のママ)
事務負担軽減? 補助金も? 税負担軽減?
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/invoice/index.html
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/invoice/materials.html

1 免税事業者から課税事業者になる方へ
 ① 納税額が売上税額の2割に軽減?(激変緩和措置:3年間継続)
 ② インボイスの登録で補助金が50万円上乗せ?
 ③ 登録申請は(2023年)4月以降でも大丈夫?

2 既に課税事業者の方も
 ① 会計ソフトに補助金?
 ② 少額取引はインボイス不要って?
 ③ 少額な値引き・返品は対応不要?

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このうち、消費税に関する部分(1①、1③、2②、2③)について解説します

A.1①について:税率軽減策
 免税事業者からインボイス事業者になった方(2年前(基準期間)の課税売上が1,000万円以下等の要件を満たす方)は、令和5年10月1日から令和8年9月30日を含む課税期間に限って、簡易課税の場合、簡易課税選択の事前の届出も不要としました。申告する時に簡易課税を適用できます。これまで免税業者だった方は、簡易課税による申告ができます。
 売上税額の2割とは、年間売上800万円だとすると、その10%消費税率 ✕
2割 = 160,000円(年間売上の2%)が、納税する消費税額であるという意味です。 
 年間売上に対しては、本来は以下に書いたとおり、業種によって年間売上の1%〜6%の消費税の納税となるのですが、最初の3年間は、2%から6%適用の業種であっても、年間売上の2%(=10%✕2割)とするという『激変緩和措置』を行っています。
 年間売上の1%だけ消費税を申告、納税する『卸売業』は、2%でなく1%の消費税を申告、納付します。
  
 簡易課税の場合の本来の消費税の申告、納税額は以下の通り。
 不動産業は売上金額の6%(第6種事業)、サービス業は5%(第5種事業)、飲食業は4%(第4種事業)、農業・林業・漁業、製造業は3%(第3種事業)、小売業は2%(第2種事業)です。卸売業の場合は1%(第1種事業)です。

 伝統芸能の道具を作成している場合、自分で原材料等を購入し、加工させて完成品とする場合は、3%(製造業)となります。

B.1③について:登録申請期日の延長
 インボイス登録申請は、令和5年(2023)9月14日まで可能です。(従来は9月1日まででした。)

Ⅽ.2②について:少額の課税仕入は領収書等が無くても仕入税額控除可能
 1万円未満の経費等(課税仕入)についてはインボイスの保存がなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除でできるようになります
これが使用できる期間は令和5年10月1日から令和11年9月30日まで(インボイス制度導入後、6年間だけの取り扱い)

D.2③について:少額な値引き・返品は対応不要
 1万円未満の値引きや返品等については、返還インボイスを交付する必要がなくなります。振込手数料分を値引き処理する場合も対象です
(この取扱は、すべての方が対象で適用期限はありません。)

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<ケース別の支援措置後の消費税負担額(概算)の納税額>

① 能装束製作者 
 (自身が原材料を購入し製造を行う事業)  第3種事業 税率3% 年間売上800万円 ☓ 3% = 24万円
② (原材料を他者から支給され加工を行う事業)第4種事業 税率4% 年間売上800万円 ☓ 4% = 32万円

③ 三味線製造および修理
 i 三味線を仕入れて最終消費者に販売する事業 小売業 第2種事業 税率2% 年間売上800万円 ☓ 2% = 16万円
ii 自身が原材料を購入し製造し販売を行う事業     第3種事業 税率3% 年間売上800万円 ☓ 3% = 24万円
 iii 自身が原材料を購入し、下請け業者に加工させる事業 第3種事業 税率3% 年間売上800万円 ☓ 3% = 24万円
※ 上記 i と ii や iii を併せて行っている場合には、原則として収入を区分して計算する。

早坂毅
芸能道具ミライ研究室・パートナー
税理士・行政書士、(有)サテライト・オフィス代表